【世界で一番】日本の教員が忙しい理由・世界と比較・労働時間

新聞やニュースで、日本の教員の労働時間があまりにも長すぎると、取り上げられることがあります。実際、世界と比較したときに日本の教員の労働時間は長いです。

OECD(経済協力開発機構)のTALIS(国際教員指導環境調査)の調査では、日本の中学校教員は週に56時間(諸外国の平均は38.3時間)、小学校の職員は週に54.4時間(諸外国は平均46.4時間)と報告されています。

主な原因は、中学校では「部活動」「一般事務作業」に従事する時間が長く、小学校では「指導」「採点」「一般事務作業」など、ほぼすべての項目で従事する時間が諸外国よりも長いです。

TALIS

TALISの調査は今回で3回目で48カ国の国・地域が参加しています。教員がアンケートに回答し、国際比較した報告書になります。次の調査は2024年に行われる予定です。

【中学校】1週間の教員の労働時間ベスト5(世界との比較)

日本56時間
アルバータ(カナダ)47時間
イングランド(イギリス)46.9時間
アメリカ46.2時間
シンガポール45.7時間
OECD31か国平均38.8時間
EU23か国全体37.5時間
TALIS参加国48か国38.3時間

『国立教育政策研究所~TALIS2018報告書~』より表作成

日本の中学校教員は、世界で一番忙しく1週間の労働時間は56時間、2位のアルバータ(カナダ)より9時間も多く働いています。注目すべき点は、OECD、EU23ヵ国、TALISよりも1週間で17時間、1ヵ月で68時間も多く働いていることです。

この1週間は「通常の1週間」で、休暇や休日、病気休業などによって勤務時間が短くならなかった1週間とし、週末や夜間など就業時間外に行った仕事を含むとしています。1週間はあくまで、「通常の1週間」で「年間を通した平均的な1週間」の労働時間でありません。

「通常の1週間」で、週末や夜間などの労働時間は56時間の中に含まれていますが、通常時ではない労働時間は含まれていません。学校現場はイベント事が多く、イレギュラーな出来事も多いことから労働時間が長くなる傾向があります。

例えば、

  • 部活の対外試合や大会参加による引率
  • 行事の引率(修学旅行の場合は夜間も交代で見回り)
  • 学校外で生徒が事件をおこしたときの対応
  • 学校周辺で事件がおきたときの見回りなど

「通常の1週間」の労働時間が短くなることは少ないですが増えることは多々あります。

そのため、ニュースや新聞などのメディアで教員の残業が月80時間以上ひどいときには200時間以上であると、取り上げられることがあります。

【中学校】1週間に教員が従事した事務作業・部活動時間(世界との比較)

事務作業部活動
日本5.6時間7.5時間
アルバータ(カナダ)2.4時間2.7時間
イングランド(イギリス)3.8時間1.7時間
アメリカ2.6時間3時間
シンガポール3.8時間2.7時間
OECD31か国平均2.7時間1.7時間
EU23か国全体2.2時間1.2時間
TALIS参加国48か国2.7時間1.9時間

『国立教育政策研究所~TALIS2018報告書~』より表作成

日本が諸外国よりも従事している時間が長いのが、事務作業5.6時間と部活動7.5時間です。事務作業は諸外国よりも約3時間長く、部活動は約5時間長いです。

事務作業

事務作業時間が諸外国よりも長い原因は、教員がすべての事務処理を担っているためです。

  • 国や地方自治体の調査やアンケートに対しての回答
  • 公文書作成
  • 会計処理
  • 学校広報
  • 生徒指導に関する書類の作成など

一般企業であれば、経理課が会計、企画部が企画を考えるのですが、分業化が促進していない日本の学校現場では、教員がすべての仕事を個人もしくはグループでおこなわなければいけません。

例えば、アメリカやイギリスなどでは、学校広報や会計処理などは専属の事務員がいるため教員はおこなっておらず、指導(授業)に特化しています。

部活動

部活動は、学校教育において推奨はされていますが必修ではありません。極端な言い方をすれば学校側が部活動をやらなくても法的には何も問題ありません。

本来であれば教員が「授業計画の準備」「成績処理」などを行わなければいけない時間を部活動に費やしています。そのため業務が滞り1週間の労働時間にも影響を及ぼします。

多くの諸外国では子供たちがスポーツをする場が、学校ではなくスポーツクラブや地域クラブになります。そのため教員が部活動に従事する時間が少ないです。

日本ではスポーツクラブや地域クラブの数が少ないため、部活がなくなると子どもたちの活動する場がなくなってしまいます。そのため部活動をやめるわけにはいかないのが現実です。

教師は、担当科目を教え、社会で必要になる能力を教えるために、教員免許を約1500~1800時間をかけて取得します。部活動の意義・重要性や指導方法についても学んでいますが、各スポーツ・文化でどのような指導をすればいいのか、具体的な方法については学んでいません。基本的に自分が行っていたスポーツや文化、もしくは空いている部活動の顧問になるのが一般的です。

事務作業・部活動時間に関する改革

事務作業

スクールサポートスタッフを配置することで、教員の事務作業の時間を減らす取り組みが行われています。事務作業以外にも、授業準備に必要なプリントのコピーや採点なども行います。

しかし、財源の問題でスクールサポートスタッフを配置できない学校もあります。いかにして財源を確保するか今後の課題です。

部活動

部活の顧問を教員がするのではなく、地域のスポーツクラブセンターの指導者、ボランティア、スポーツ選手、大学生などに外部委託する案が採用され、一部の地域でおこなわれています。

課題としては、どのように顧問を採用するかです。基準は?お給料は?生徒の安全性の確保は?責任は?

ボランティアや大学生の力だけでは人員を確保できないため、こちらも事務作業と同様に専任の顧問を配置するための財源が必要になります。

【中学校】1週間に教員が従事した指導(授業)時間

1週間労働時間指導時間(授業)
日本56時間18時間
アルバータ(カナダ)47時間27.2時間
イングランド(イギリス)46.9時間20.1時間
アメリカ46.2時間28.1時間
シンガポール45.7時間17.9時間
OECD31か国平均38.8時間20.6時間
EU23か国全体37.5時間18.8時間
TALIS参加国48か国38.3時間20.3時間

『国立教育政策研究所~TALIS2018報告書~』より表作成

1週間の労働時間が長い割には指導(授業)時間が短いです。これは日本の教員が忙しく事務作業に追われ、本来の指導(授業)時間が取れていないことを示しています。

日本の教員が1週間に生徒の指導(授業)に従事した時間は18時間と平均よりも2時間少ないです。1週間の労働時間が長い5ヵ国中2番目に指導(授業)時間が短いです。

MEMO
平成29・30年に学習指導要領の改訂により「脱ゆとり」がおこなわれ、授業時間が増加し学習時間が増えています。そのため、教員の指導(授業)は増えていると考えられます。

【小学校】1週間の教員の労働時間ベスト5(世界との比較)

日本54.4時間
イングランド48.3時間
オーストラリア43.7時間
ベトナム43.7時間
スウェーデン42.7時間

『国立教育政策研究所~TALIS2018報告書~』より表作成

日本の小学校教員は、世界で一番忙しく1週間の労働時間は54.4時間です。

中学校とは異なり小学校は、教員がクラブ活動(部活)に従事する時間は週に約30分と諸外国の平均よりも短い時間ですが、指導(授業)・授業計画・学内作業・学校運営など各項目で従事する時間が長いです。

特に中学校と同様に、小学校の事務作業に従事する時間が週に5.2時間と長く、諸外国の平均約2.5時間よりも2.8時間長いです。

さいごに

教員の働き方改革が本格的にはじまっています。スクールサポートスタッフの配置、警備員の配置、部活動の外部委託、パソコン導入による事務の効率化、電子端末利用による授業の効率化など積極的におこなわれています。これからさらなる教員の働き方改革がおこなわれると思われます。