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いよいよ2026年4月から、中学校(まずは第1学年)でも「35人学級」への移行が本格的にスタートします。
小学校ではすでに完了していましたが、ついに中学校でも「40人学級」というすし詰め状態が、過去のものになろうとしています。
ニュースでは「きめ細かな指導が可能に」「中1ギャップの解消」といった美しい言葉が並んでいますが、「そんな単純な話じゃない」というのが本音です。
「たった5人減るだけで、本当に何かが変わるの?」
「クラス数が増えるってことは、先生の数は足りるの?質の低い先生が担任になる確率は?」
そんな保護者の方の鋭い疑問に対し、当ブログならではの「ガジェット・環境」としての視点を交えて、きれいごと抜きの完全解説を行います。
一般的に言われている理由は、「中1ギャップ(環境変化による不登校)」の解消や、個に応じた指導の充実です。
もちろんそれも嘘ではありません。
しかし、私が現場目線で最も大きいと感じる切実な理由は、実は精神論ではなく「物理スペースの限界」です。
いきなりスペックの話をします。 現在、公立中学校で使われている標準的な学習机(新JIS規格)の天板サイズをご存知でしょうか?
幅65cm × 奥行45cm です。
この限られたスペースの上で、現代の中学生は何をしなければならないか。
- 教科書を開く(A4サイズ。開くとA3=42cm×30cm)
- ノートを広げる(B5サイズ。開くとB4=36cm×25cm)
- 筆記用具を置く
- 11インチ等のChromebook(またはiPad)を置く(約30cm×20cm)
……物理的に、面積オーバーなんです。
40人学級の教室では、隣の席との間隔が狭すぎて、机の脇にサブの荷物置き場を作ることもできません。
結果どうなるかというと、教科書の上にPCを重ねて不安定になったり、通路を通る友達の鞄が引っかかったりして、「ガシャン!」と端末が床に落ちる事故が多発してしまいます。
液晶割れの修理費用、誰が払うのか問題で揉めた経験のある学校も多いはずです。
つまり、今回の35人学級化は、教育の質以前に「GIGAスクール構想を維持するための、物理的な無理ゲー状態を解消する唯一の手段」なのです。

では、実際に「マイナス5人」になることで、教室内のオペレーションはどう変わるのでしょうか。現場の教員しか気づかないような変化も含めて解説します。
40人学級の教室は、本当にパンパンです。 教員が「机間巡視(授業中に生徒の席を回ること)」をしようとすると、通路幅が40〜50cmほどしか確保できず、体を横にしてすり抜ける「カニ歩き」が必須でした。
これ、笑い話のように聞こえますが、教育上は深刻な問題なんです。 カニ歩きをしていると、どうしても動きが遅くなりますし、視界が狭くなります。
35人学級になり、通路幅があと10cm広がるだけで、教員は「前を向いて」スムーズに歩けるようになります。
生徒が小さな声で「ここ分からない…」と呟いた時や、突っ伏して体調が悪そうな時。生徒のSOSに気づいて駆け寄るスピードが、物理的に数秒速くなります。
この「数秒の差」が、生徒との信頼関係や、トラブルの未然防止に直結するのです。
40人学級の最後列、特に廊下側の端っこなどは、教卓から一番遠く、他の生徒の背中に隠れてしまう「死角」になりがちでした。
集中力が切れてスマホをいじっていたり、寝ていたりしても、教員から見えにくい場所です。
人数が減り、座席配置にゆとりができる(例えば横一列を減らす、あるいは列の間隔を開ける)ことで、教員の視線が教室の隅々まで通りやすくなります。
これは「監視」が強まるという意味ではなく、「見守り」の密度が均一化されるという大きなメリットです。
50分という限られた授業時間で、教員が生徒1人あたりに割ける持ち時間を計算してみましょう。
- 40人学級: 50分 ÷ 40人 = 1分15秒
- 35人学級: 50分 ÷ 35人 = 1分25秒
「たった10秒しか変わらないの?」と思われるかもしれません。
しかし、この10秒があれば、記述式の回答に対して「よくできたね、次はここを工夫してみよう」と具体的な赤ペン添削ができます。
逆に時間がなければ、「見ました」というハンコを押して終わりです。
この「添削の質」の積み重ねが、1年後の学力や、通知表の「主体的に学習に取り組む態度」の評価に大きな差となって現れます。

ここまでメリットを挙げましたが、当ブログは「良いことばかり」を書くつもりはありません。
現在、Google検索で「35人学級」と打ち込むと、「教室不足」「教員不足」というネガティブなワードがサジェストされます。
保護者の方が本当に心配すべき、2026年の「副作用」について解説します。
35人学級にするためには、1学年の生徒数が同じでも、クラス数を増やさなければなりません。
(例:140人の中1の場合、40人学級なら3.5クラス=4クラスですが、35人学級ならちょうど4クラス。160人なら、40人×4クラスから、35人×4.5クラス=5クラスに増えます)
クラスが増えるということは、「教室」が必要になります。
しかし、校舎はいきなり広くなりません。今、多くの自治体で起きているのが「特別教室の転用」です。
- 少人数指導教室
- 視聴覚室
- 会議室
- (最悪の場合)第2理科室や美術室
これらを無理やり「普通教室(〇年〇組の部屋)」にリフォームする工事が行われています。
最も危惧しているのは、「実験や実技の軽視」です。
もし理科室がホームルームとして占拠されてしまったら?
理科の授業は、実験器具の揃った部屋ではなく、普通教室で「実験動画をYouTubeで見るだけ」になるかもしれません。
「探究的な学び」が重要視されている今の教育トレンドにおいて、設備面での環境後退は致命的です。
クラス数が増えれば、当然、担任の先生も増員が必要です。
しかし、ご存知の通り、現在の教育現場は深刻な「教員不足(教員採用試験の倍率低下)」が続いています。
正規採用の教員だけで枠が埋まらない場合、誰が担任になるのか。
- 大学卒業直後の「臨時的任用講師」(若さとやる気はあるが、経験値はゼロ)
- 教員免許はあるが指導経験がない「ペーパーティーチャー」
- 定年退職後に再雇用されたベテラン(体力的に厳しい場合も)
もちろん、講師の方でも素晴らしい先生はたくさんいます。
しかし、確率論として「ベテランが統率する安定したクラス」と「経験不足の先生がさばききれないクラス」の格差(いわゆる先生ガチャ)が、これまで以上に発生しやすくなるのは事実です。
「少人数で手厚い指導」のはずが、「先生のキャパシティオーバーで学級崩壊」となっては本末転倒です。
この「質の担保」が2026年問題の最大の懸念点です。
「35人学級」とセットで検索されているのが、部活動の地域移行や縮小の問題です。
クラス数が増えるということは、教員一人ひとりの負担(持ちコマ数)が増えることを意味します。 その結果、何が犠牲になるか? 部活動の指導時間です。
担任業務と授業準備で手一杯になった先生は、部活に顔を出せなくなります。
これまで熱心に指導してくれていた先生が、35人学級化の業務増で「名前だけの顧問」になり、部活が実質的な自習状態(ゆるブラック化)になるケースが予想されます。
「部活で内申点を稼ぎたい」「スポーツ推薦を狙いたい」と考えているご家庭にとっては、学校の部活だけに頼るのはリスクが高い時代に入りました。
「部活はあくまでレクリエーション、技術向上は外部のクラブチームで」という割り切りが、2026年以降のスタンダードになるかもしれません。
意外と見落とされがちなのが、学校内ネットワークの混雑です。
生徒の総数は変わりませんが、クラス(アクセスポイント)ごとの接続密度が変わります。
また、新たに教室に転用された部屋(元・会議室など)のWi-Fi強度が弱く、「このクラスだけタブレットが繋がりにくい」というデジタル格差が起きる可能性があります。

35人学級には、数学的な罠があります。それは「35」が奇数であるという点です。
中学校の英語や国語の授業では、頻繁に「ペアワーク(隣の人と対話)」が行われます。
40人(偶数)ならスムーズに組めましたが、35人学級ではクラスに必ず1人、「ペアの相手がいない生徒」が発生します。
- 先生がペアの相手をする(先生が他の生徒を見られなくなる)
- 急遽3人組を作る(1人が会話に入れず、疎外感を感じる)
この「あぶれる1人」のケアが、担任の腕の見せ所なのですが、経験の浅い先生だとここが雑になりがちです。
お子さんが「今日の英語、3人組で気まずかった」とこぼしたら、それは単なる愚痴ではなく、クラス運営の黄色信号かもしれません。
40人の集団には、良い意味での「雑音(ノイズ)」や「無関心」がありました。
しかし、人数が減ると、全員が全員の顔と性格を把握しやすくなります。これはメリットのようでいて、思春期には「キャラの固定化」という副作用を生みます。
- 一度「いじられキャラ」になると、40人の時よりも抜け出しにくい。
- 気が合わないボス的な生徒がいる場合、物理的な距離を取るのが難しい。
「少人数学級=アットホーム」というのは大人の幻想です。
「濃密すぎる人間関係」に息苦しさを感じる生徒がいることを、大人は知っておく必要があります。
ここからは、検索クエリでよく見かける保護者の皆様の細かい疑問に、一問一答形式で本音回答します。
A. 「主体的な生徒」には有利に働きます。
人数が減ることで、先生は生徒一人ひとりの「挙手の回数」や「振り返りシートの記述」を細かくチェックできるようになります。「頑張っているのに気づいてもらえない」という事態は減るでしょう。
逆に言えば、授業中にぼーっとしている、提出物が雑、といったマイナス面も先生の目に入りやすくなります。
サボっているのがバレやすくなるので要注意です。
A. 単純計算で上がります。
分母が減るわけですから、委員や係が回ってくる確率は高くなります。ただ、クラスサイズが小さくなることで、保護者同士の顔が見えやすくなり、連携が取りやすくなるというメリットもあります。
2026年4月からの中学校35人学級化。 学習環境としてのスペック、特に「GIGAスクール端末を使うための物理スペース」としては間違いなく向上します。
一方で、それを運用する「人(教員)」と「場所(特別教室の空き)」には、綱渡りのような課題が残っているのが現状です。
制度が変わっても、結局は現場の運用次第。 この変化が良い方向に向かうよう、私たちも注目していく必要があります。



