(※本ページ内のリンクには広告が含まれています。)
日本の大学は「授業に出席しなくても単位が取れる」から卒業するのは簡単であると言われています。
そもそも大学の先生はなぜ大学生が授業に出席しなくても単位を与えていたのか。なぜ「授業に出席しなくても単位が取れる」と言われるようになったのか。
現在、大学はどのような出席対策をおこなっているのか説明していきます。
昔の大学生の質は高かった
大学改革 参考資料 平成30年2月 内閣官房人生100年時代構想推進室より引用
「授業に出席しなくても単位が取れる」話をする前に、大学の数と定員割れについて説明します。
日本には約780の大学があり、2019年大学への進学率は54%です。大学の25%は定員割れの状態なので、学部や場所にこだわらなければ簡単に大学に進学することができます。
それに対して、戦後の1955年大学の数は228校で進学率は7.9%、1975年には大学の数は420校で進学率は27.2%と、今とは異なり大学の定員割れはなく、誰でも簡単に大学に進学できる時代ではありませんでした。
そのため、「エリート」という言葉が正しい表現か難しいところですが、いまよりも全体的に大学生の質は高かったと言えます。
このことを頭の片隅に入れて読み進めてください。
大学の先生はなぜ大学生が授業に出席しなくても単位を与えていたのか
まず勘違いしてはいけないのは、大学生は授業に出席していないとしてもテストは受けています。テストである一定以上の基準をクリアーしているため単位を取得することができます。
ではなぜ大学の先生は、大学生が授業に出席しなくても単位を与えていたのでしょうか。
大きな要因は2つあります。
- 大学生の自主性を重んじていた
- 授業に出席しないと解けない問題を出題していた
大学生の自主性を重んじていた
「大学生の自主性」と聞くと、いまでも大学生の自主性は重んじられているのではないかと疑問を抱くかもしれませんが、今よりも自主性を重んじていました。
大学側が大学生に対して、友達を作りやすいように「クラス制度」、高校までの復習をする「リメディアル教育」や就活力を身につける「キャリア教育」などは導入せず、勉強以外の面でも「自分で考えて行動しない」というスタンスでした。
そのため大学の授業に「出席するのか」「出席しないのか」についても、自分で考えて行動すればいいと考える先生(授業)が多かったのです。よく言えば「大学生の自主性を重んじる」悪く言えば「あまり積極的に大学生に対して介入しない」という考え方でした。
大学の先生たち自由放任主義的な考えである一方で大学生のことを信じていました。
「全体的に大学生の質が高いため」授業に出席しない変わりに、「何か勉強をしたり」「社会性を身につける行動をしている」と考え、学期末テストでは授業に出席しなくても帳尻を合わせてくると信じていたわけです。
実際に帳尻を合わせることができる大学生が多いため「大学生が授業に出席しなくても単位」が取得できたわけです。
授業に出席しないと解けない問題を出題していた
さきほど、大学生は授業に出席しなくてもテストでは帳尻を合わせる話をしましたが、大学の先生は授業に出席しなくても帳尻を合わせることができるテストの問題を出題せず、授業の質は維持していました。
簡単にまとめると
- 大学生:授業には出席はしないで他のことをするよ~
- 先生:授業の質は維持します。
- 大学生;プリントを集めたりして対策します。
- 先生:プリントを暗記しただけでは解けない問題を出題します。それでも問題を解くことができれば単位をあげますよ。
例えば、どのような問題が出題されたかというと
- 勉強したうえで望まないとテスト時間内に終わらない
- 資料持ち込み可であるが、そもそも資料に書いてある文章を理解していないとテストが解けない
- ボールペン(万年筆)で文章を書く※書き直しが大変
要するに、授業に出席しなくてもある一定以上勉強しないと解けない問題を出題していました。そして大学生たちはその壁を越えて単位を取得していました。
「授業に出席しなくても単位が取れる」ことが簡単なことではありませんでした。
すべての授業が出席しなくても単位が取得できたわけではありません。
「授業に出席しなくても単位が取れる」の変化
「授業に出席しなくても単位を取ること」は難しいとは言いませんが、簡単なことではありませんでした。
しかし、いつのまにか「授業に出席しなくても単位が取れる」ことが簡単であると認識されるようになりました。
なぜこのような変化が起きたのか説明します。
- 少子化なのに大学の数が増えたことで大学生の質が低下
- いままでと同じ難易度のテストを出題すると、授業に出席していない大学生が単位を取得できない
- 大学側は大学生が単位を取得できるような指導を先生に求める
- 先生はテストの難易度を下げる
大学の先生(大学側)からすれば大学生の質を維持したいですが、下位大学いわゆるFラン大学では高校の基礎知識がない大学生が多いため、必然的にテストの難易度を下げざる負えません。
そのため、テストで論述問題の出題が少なくなり、高校のテストのような選択問題や穴埋め問題が出題されるようになります。
少子化にも関わらず、大学の数が増え下位大学で競争がなくなったことで、大学生の質が低下しテストで帳尻合わせをすることができない人が増えました。
結果として、テストは簡単になり、いままでと同じように授業には出席しないため「授業に出席しなくても単位が取れる」ことが簡単であると認識されるようになりました。
国の対策
このような状況を改善するために、2006年に国が対策を打ち出しました。
- 2単位取得するためには、90分授業を15回行うこと
- 出席が3分の2に満たない人は、いかなる理由でも単位を認めない
- 休講の場合は補講もしくはレポートを課して補講の代わりとする
大学生の質の低下を防ぐためには、授業に出席させることが重要であると考えたわけです。
この規定ができたことで「授業に出席しなくても単位が取れる」ことはなくなり、一般的に1科目(90分×15回)で単位2を取得できますので、最低でも10回は授業に出席しないといけなくなりました。
さいごに
ここ最近では、大学ではタッチカードなど電子機器を利用して出席確認を取るようになりました。
抜け道として友達にカードをタッチしてもらう方法もありますが、授業でコメントペーパーを提出させ成績の評価に加える方法で、不正ができないように対策している授業もあります。